sen2_k一覧

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 男が二人、闇の中に立っていた。  そこには、愛する者を喪った男がいた。  男は狂った修道士の群れに交じり、窓の外を見ていた。  心持...

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獣の王子

 小さいが、実りが豊かで、善良な人々が仲良く暮らす国があった。  その国の慈悲深い王と、気高く美しい王妃の間に王子が生まれた。  王子の...

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煙草

「ほら、早くしてよ」  泥酔した友達に肩を貸して、居酒屋を出る。  大人数のコンパ、はめを外した若者ならぬバカ者は、他にも大勢いる。 ...

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荒野

 天使が荒野に降ってきて、小さな星を落としていった。  羊飼いはそれを拾って、王に届けた。  王は星があまり輝くので、むしゃむしゃと星を...

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夕暮れ

「グリコしよう」 「はぁ?」  一紀は素っ頓狂な声を上げた。  もうすぐ取り壊されることが決まっている旧校舎には、図書館が取り残されて...

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 リクはヘンな男の子だ。  僕はリクと一緒に絵を書くのが仕事だ。  リクと僕は、ひとつの机で頭がくっつきそうなほどひっついて絵を描く...

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小さな花

 2 むかしあるところに、小さな国と、大きな国がありました。 小さな国のお姫さまと、大きな国の王子さまは、こいびと同士でした。 小さな国は...

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花吹雪

「最近、駄目なんだよね」 麻実子はそう言ってカクテルのグラスを傾けた。 「また、だんなと喧嘩でもしたの?」 私と麻実子はこのバーで知り合った...

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雪に君を思う

窓の外はどんよりとした曇り空だ。屋根の色が一様に灰色なのは天気のせいばかりじゃない。古い町並みは揃ってくすんでいる。 あたしはため息を漏らし...

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海より来たる

その頃、僕は毎年、夏の数週間を海辺の別荘で過ごしていた。 別荘は海岸の際に建ち、台風の夜は波に攫われないのが不思議なくらい、海のそばに佇んで...

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香水

僕は独りの女を抱いている。 女は僕の教え子で、僕は彼女に先生と呼ばれている。 彼女は僕の耳に舌を這わせ、柔らかく噛み付いた。 僕は身体を震わ...

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遠雷

私は歩いていた。 それは困難な道だった。 歩いても歩いても到底目指すところには辿り着かないのではないかと、幾度も疑わずに入られない程のもの...

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蛇の吐息

目覚めると、僕の隣には魔法使いが眠っていた。 眠っていたっていうのは間違いだ。僕と同じように眠っていた名残のようなものを魔法使いに感じたのだ...

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月と月と夢

天空には三つの月が踊っている。 そのうち環を頂いた一番大きな月を、瑠璃宮と人は呼ぶ。 瑠璃宮の隣が矢作の君、二つにかしずくように控えめに光る...

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種子

ある霧の夜、魔法使いが小さな猫を拾ってきた。 霧は魔法使いの光を吸い込むほど暗い漆黒の髪を濡らし、しっとりと頬を湿らせる。 足首まですっぽり...

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竜の祭り

僕は妖精、生も死も、魔法使いの手に握られた、哀れな囚人。 魔法使いは漆黒の髪、灰色の瞳、絶望したような空の色をしたその目は、僕を蔑み続ける。...

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夜薔薇姫

僕は魔法使いの弟子、名前は忘れてしまった。 確かそれは美しい響きの、この世で僕しか持っていない大切な名前だった。 魔法使いは僕の名前を奪って...

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夜の遊覧飛行

僕は魔法使いの弟子、弟子と言ってもただの使いっ走り、魔法使いは僕の全てを支配して、そして蹂躙する時を待ち侘びている。 僕はいつか来るその日の...

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